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十見社長に聞く
今後のSTIフードホールディングスの戦略
上場から2年目を迎え、「水産食品分野のグローバル・カテゴリー・キラーを目指す」という十見裕代表取締役社長に、2022年12月期の展望と中長期的な経営戦略について聞きました。
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2022年12月期の展望と取り組みについて教えてください。
保守的な業績予想をしつつも
今後の成長を担保するための「地固め」をする1年と位置付けています。
当社はこれまで毎年おおむね約13%の成長を達成してきましたが、当期の業績については前期比10%弱の増収と、やや保守的に予想させていただいています。
その理由は2つあります。1つは、地政学リスクによるエネルギー資源価格の高騰、新型コロナウイルス感染症の影響、欧米のインフレといった不確定要素が非常に多いことです。特に石油価格の高騰は商品の包装資材や電気料金といった多方面でのコスト上昇に直結するだけに、先の見通しがつきにくいのです。
しかし、こうした状況だからといってすぐには価格転嫁できないこと、これが、保守的な予想をさせていただいた2つめの理由です。
当社の主要取引先は国内トップシェアのコンビニチェーン、セブン-イレブン様で、商品のリニューアルのたびに現状に合わせたフェアな価格を再設定させていただくことは、もちろんできます。けれども、私たちの商品を実際に買ってくださる消費者の懐事情は、今なお厳しいのではないでしょうか。
食品は、人間が生きていくためになくてはならないものです。当社は小売業のお客様を通して商品を販売させていただいていますが、その先にいる消費者が私たちの一番大切なお客様だと思っています。ですから、単に資源高だから、不確定要素が多いからという理由だけで直ちに値上げをすることはできません。当期は私たちの企業努力によって消費者に納得していただける価格設定で商品を販売し、当社の水産食品に対する長年のご支持に応えていきたいと思います。
保守的な見通しではありますが、予想数値というのは市場に対する当社の約束、コミットメントです。現時点で最低限これだけは達成可能だと自分たちが確信できるものをベースにしなければならないと、私たちは考えています。
ただし、ここでぜひお伝えしたいのは、当期は今後の成長を担保するための「地固め」を行う大事な年でもある、ということです。そのための重点施策を、これから積極的に推進してまいります。
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成長のスピードアップを目指し、
販路拡大や省人化モデル工場の新設、技術の磨き上げに挑戦。
企業としての成長のスピードアップを目指します。まず、売上拡大を加速させたいと考えています。そのための具体策が、販売チャネルの拡大です。これまでセブン-イレブン様以外の小売パートナーも地道に増やしてきたものの、売上拡大につながるまでにはやはり時間がかかります。そこで、成長をより加速させるために、多様なライフスタイルに合った販売チャネルの活用に挑戦してまいります。加えて、ある程度の規模の販売会社をM&Aで当社グループに加えることも視野に入れ、ともにタッグを組む仲間を検討していきます。
また、本年1月からは新たに大手健康食品通販会社様のECサイトで焼き魚等の商品の販売を開始しました。当社はこれまで消費者にリアル店舗で商品を見て買っていただくことを中心にしており、自社ECサイトも運営はしているものの、どちらかといえば商品開発に向けたマーケティングが目的でした。しかし、コロナ禍のこの2年で非接触・非対面のサービスが重視されるようになってきたことから、リアル店舗に足を運びにくい消費者にもお届けしたいと、今回通販会社様の「頒布会」という形で販売を始めました。ありがたいことに当初から非常に反応がよく、解約率も5%程度と低いです。やはり、多くの会員を有する通販会社様ならではの販売力の大きさを実感しています。また、宅配サービスやオフィス向け社食サービスへの販売など、多様な販売チャネルを活用した販路開拓にも取り組んでおります。

中長期的な成長に向けては、人の手を極力使わない未来型の省人化モデル工場を近畿圏に新設する予定です。これは、コロナ禍での労働力不足を補うためだけではなく、今後の首都圏工場の最新鋭化、さらには将来のアメリカ工場新設も見据え、それらのベースとなるモデルケースを作るという狙いもあります。例えば冷凍保管している原材料の搬出を完全自動化するなど、徹底的に省人化を追求し、既存の水産食品工場にはない新たな試みを行っていきたいと思います。株主・投資家の皆様には、ぜひ工場のご紹介をさせていただきたいですね。
商品開発に関しては、これまで以上に他社との強力な差別化ができるものを作っていきたいと考えています。当社の成長を推進する原動力の1つは、世の中になかったユニークな水産食品を生み出せる独自の製法と技術です。今後も新たな製法・技術開発へのチャレンジを加速させていくのはもちろん、それらを投入して開発した技術をしっかりと権利化し、収益を担保していきます。
以上のような取り組みを進めながら、早期に売上高500億円を突破し、次なるステージ、プライム市場上場を目指していきたいと考えています。
フードロス削減に向けた取り組みについて教えてください。
よりよい商品を作る中でフードロスやCO2排出量を削減。
「三方よし」の商品づくりを続け、世の中に求められる企業でありたい。
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また、私たち食品会社の大きな使命がフードロスの削減です。当社では、原材料の中で従来廃棄していた部分も独自の製法・技術で商品化しています。その1つが、鮭の中骨の水煮缶です。通常の缶詰とは異なる製法で鮭の太い中骨を食べやすく加工したもので、消費者からはおいしくてカルシウム等も豊富に摂れると、非常に好評です。そしてメーカーである私たちもフードロスと原材料コストを低減できるという、まさに昔の近江商人の経営理念として知られる「三方よし」を具現化した商品だと自負しています。
三方よしとは、「売り手よし・買い手よし・世間よし」、つまり、売り手も買い手も満足し、さらに社会にも貢献できるのがよい商売だとする考え方ですが、私はこの「世間よし」こそ現代のESGやSDGsだと考えています。今後もこうした考え方をベースにして商品を作り続けていく限り、世の中は当社を必要としてくださると確信しています。
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中長期的な目標を教えてください。
水産食品分野のグローバル・カテゴリー・キラーとなり
売上高・時価総額ともに1,000億円を達成する「Next W 1000」を目指します。

今後の展開については、まずアジア進出、そして5年以内にはアメリカ進出を実現し、「水産食品分野のグローバル・カテゴリー・キラー」になりたいと考えています。
そしてもう1つ、目標として掲げているのが「Next W 1000」。すなわち「売上高・時価総額ともに1,000億円を達成すること」です。
もちろん、単に売上高さえ増えればよいわけではありませんが、やはり企業として、少なくとも現在の事業規模を1桁上げるようなところまでは成長していきたい。そうした成長に向けた通過点の1つが、プライム市場上場だと思っています。
株主の皆様へのメッセージをお願いします。
当期は次なる成長に向けて大きくジャンプするために、いったんかがむ時。
さらなる飛躍を目指し、しっかりと力を蓄えます。
上場から2年目を迎え、コーポレート・ガバナンスやESG、SDGsといった社会的責任も含めて、「成長していくことに対する責任」をより強く感じるようになりました。株主ならびに投資家の皆様のご支援を受けて、企業としてよりよい形で成長していく機会を与えていただいたわけですから、上場して本当によかったと思っています。それだけに、当社を応援してくださる皆様にはできる限り早く利益を還元していきたいと考えております。
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大きくジャンプするためには、一度姿勢を低くしなければなりません。当社にとってこの1年は、まさに次のステージに向かって成長していくために、いったんかがんで力を蓄える時期だと位置付けています。ぜひ、私たちの思いをご理解いただき、今しばらくお待ちいただきたいと思っております。もちろん、今後も情勢変化に応じて随時情報を開示し、前向きなことをお伝えしていけたらと考えております。
私たちは成長への手綱を緩めることなく、さらなる努力を続けてまいります。株主ならびに投資家の皆様におかれましては、ぜひ当社のこれからにご期待いただき、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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

チリ銀鮭のドレス※状態の原材料の99.2%の部位を使用しています。そのうち89.2%は製品化し、一貫生産体制と高い技術力で実現する素材を使い切る製品ポートフォリオにより、フードロス・食品廃棄物の削減に取り組んでいます。
STIフードホールディングスだからこそできる、おいしさの追求と原材料コスト低減、そしてフードロス削減の3つすべての実現。これからも調達・加工・流通・消費・廃棄までのすべてのバリューチェーンにおいて環境や社会への負荷を軽減し、事業を通じて社会課題解決に取り組みます。
※ ドレス:頭部、エラ、内臓を除いたもの
素材を無駄なく使い切る製品ポートフォリオ
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
配当金・配当性向
当社は利益配分につきましては、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題の1つと認識し、将来の企業価値向上と競争力を極大化すること、また企業体質強化のための内部留保を勘案しつつ、現在は業績に見合った利益還元を行うことを基本方針としております。
株主優待
対象となる株主様 | 基準日時点の株主名簿に記載された100株(1単元)以上を保有されている株主様 |
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基準日 | 12月末日(期末)/6月末日(中間期末) |
優待品発送日 | 期末優待品:3月下旬ごろ 中間期末優待品:8月下旬ごろ |
優待内容 | 株主様限定の当社商品 |
近年、企業が事業活動を行う上で注目されているのがSDGsへの取り組みです。当社では原材料の調達から加工・流通・消費・廃棄までのすべてのバリューチェーンにおいて環境や社会への負荷を軽減し、社会課題の解決に取り組んでいます。
例えば、冷凍食品の食感をよくするために行う凍結作業に関しては、これまで使っていたフロンガスを用いた電気式フリーザーから、CO2排出量をより多く削減できる窒素凍結機に変更するといった取り組みを進めています。