STIフードホールディングスの戦略十見社長に聞く今後のSTIフードホールディングスの戦略
参入障壁の高さを強みに、上場で調達させていただいた資金をもとに成長戦略を遂行し、企業価値の向上を図り、株主ならびに投資家の皆様のご期待にお応えします。
事業と強みについて教えてください
いつでも食べられる手軽さと料理店に負けないおいしさ、
値ごろ感の並立に情熱を注ぐ水産食品メーカーです。
当社は、水産食材に特化した食品メーカーです。最大の強みは、鮭、さんま、鯖、ほっけなど、旬の素材が持つうま味を、調味料に頼ることなく最大限に引き出す技術力です。
例えば味覚の数値化がその1つです。『おいしさ』の根拠を示すため、素材に含まれるアミノ酸、脂肪分、水分などから、歯ごたえや舌触りといった感覚まで『おいしさ』のすべてを数値化する技術を15年かけて確立しました。また、スモークサーモン用の燻製措置を自社開発。現在は、より濃密で味わい深い商品をお届けするため、安心・安全な天日干しの環境を工場内に整備する準備を進めています。
近年は「調理と後片付けが面倒」「骨があって食べづらい」「焼くと家中が臭くなる」などの理由で若い世代の魚離れが進んでいますが、レンジアップで簡単に食べられるような手軽さ、高級料理店に負けないおいしさ、値ごろ感を並列することで、魚を敬遠する消費者はいなくなる——そんな想いで研究開発に情熱を注いでいます。
主要取引先は全国に2万店を展開するセブン-イレブン。
技術開発力と供給力を高め、
コンビニ惣菜のイメージを変えた。
販売先別売上構成比では約80%がセブン-イレブン向け、全国約2万店(北海道を除く)のセブン-イレブンに水産惣菜を提供しています。惣菜(焼魚、カップサラダなど)、冷凍食品、缶詰などで、冷凍・チルド・常温の3温度帯に対応できる食品メーカーとして、設立以来、長年良好なパートナーシップを継続しています。
セブン-イレブンは国内トップシェアのコンビニチェーンですので、株主ならびに投資家の皆様のなかにもお気づきになっている方がおられると思いますが、セブン-イレブンの店舗では近年、お弁当売り場が縮小しています。要因はお弁当の需要が減少したためで、2016年の指数を100とすれば2019年には92まで落ち込みました。
一方、惣菜の需要指数は140まで伸びており、当社の売上は200%以上増えました。これはつまり、セブン-イレブンの惣菜売り場の広さが3年間で2倍になったということが要因です。私たちは利用者のニーズの変化をいち早く察知し、技術開発力と供給力を高めることによって「コンビニの水産物惣菜はおいしくない」という従来のイメージを覆し、コンビニ内での惣菜の位置づけを変えたのです。
2020年12月期の業績について教えてください
チルド惣菜・カップサラダが大きく伸長。
原価改善の効果もあり2020年12月期は大幅増益を達成。
石巻と近畿エリアの新工場の本格稼働をステップとして
需要の充足率向上と物流費の低減に取り組む。
2020年12月期は、増大する需要に供給体制の強化が追いつかず、物流費が増えたことから、今期はこの課題解決に取り組みます。具体的な施策は生産工場の適正配置です。当社はこの10年で国内の製造工場は、船橋・白岡・石巻・焼津・福岡など10拠点へ拡大し、北海道を除く全国エリアをカバーしていますが、商品によっては福岡から和歌山、千葉・埼玉から東北といった長距離輸送が発生しています。
そこで昨年は、石巻にある冷凍工場をM&Aのうえ、再建・子会社化しました。これにより、石巻ではおにぎり用具材からスモーク製品、缶詰まですべての商品の生産が可能となり、青森から北関東までの配送効率は大幅に向上します。また、現在は近畿エリアにおいてもM&Aによる新工場の取得をめざして最終調整を進めています。
石巻の工場は第2四半期中、近畿エリアに予定する新工場は今期中の稼働を目指しており、既存の生産設備の増強ならびにIT化を含めた今期の投資予定額は約11億円となります。今期は2工場の稼働をステップに需要の充足率を高め、物流費を低減して、国内の経営基盤をより強固にしたいと考えています。
M&Aについては、私自身、30年前に設立した前身の貿易会社『新東京インターナショナル』で絶体絶命の経営危機に直面した時に助けていただいた経験がありますので、工夫と我慢を重ねてきた経営者に寄り添い、勇気づける『雨天の友』でありたいという想いで取り組んでいます。売上至上主義から収益を重視する経営に切り替えたことも含め、過去の失敗から学び、再起した私だからこそできる戦略だと思っています。
2021年12月期の見通しと戦略について教えてください。
セブン-イレブンとの取引拡大と海外進出、
EC展開、小売店との連携など、成長戦略は多彩。
2021年12月期は成長投資を遂行しつつ、売上高は前年比112.7%の260億円、営業利益は前年比119.8%の15.7億円を計画しています。
株主ならびに投資家の皆様のなかには、セブン-イレブン向けの売上が80%を超えていることを懸念されている方もおられると思いますが、セブン-イレブンとの取引拡大はSTIフードホールディングスの成長戦略の柱です。成長するために最も大切なのは、参入障壁の高い水産食品を開発できるメーカーであり続けること。セブン-イレブンの消費者ニーズに合致した新製品の開発力と商品供給力、品質管理力をさらに高め、他社につけいる隙を与えずにパートナーシップを維持するということです。セブン-イレブンは世の中を変える力を持っているコンビニチェーン。発言力を高める努力をしながらそのニーズに応えるのが我々のビジネスです。
その延長線上にあるのが新規販売チャネルの開拓です。当社はノドグロ・キンキ・甘鯛など、手に入りにくく、かつ、コンビニでは販売が難しい高級魚を安定的に調達できますので、魚好きにとってはたまらないECサイトを自社ブランドとして展開したいと考えています。また、おいしい魚をできるだけ多くの方にお届けしたいという想いがありますので、オペレーションコストの最適化に取り組み、いいものを値ごろ感のある価格で提供している地域密着型スーパーとの連携も視野に入れています。
海外展開については、まずはアジアです。韓国と台湾、上海をマーケットとして2023年度までにスタートしたいと考えています。その後はアメリカです。北米で約9,800店舗を展開する7-Eleven,Inc.を通じて進出し、国内と同様のカテゴリー・キラー戦略を展開する予定です。2025年度にはアメリカ西海岸でスタートし、10年後には東海岸に工場をつくりたいと考えています。デフレが続く日本ではビジネス街でランチを食べても1,000円でお釣りがきますが、北米は20ドルが相場で人も多い。そこに魅力を感じています。
株主様へのメッセージをお願いします
最後になりましたが、成長によって企業価値を高め、株主の皆様に安定した配当をお届けすることが我々の責務です。配当以外の株主還元につきましては、調達力のある水産食品メーカーとしての強みを生かす形で考えています。宮城・三陸金華山沖で水揚げされるブランド鯖『金華鯖』の生缶詰での提供をはじめ、当社の食品を味わい、笑顔になっていただけるプランを検討しておりますので、楽しみにお待ちいただければと思います。
年平均成長率は、株式投資や財務分析において企業の成長を計るために使われる指標です。
13%を超える成長率は、当社ビジネスが急速に拡大していることを示しています。
今後は、昨年の上場を期に今まで以上に事業拡大速度を速め、株主ならびに投資家の皆様からの期待にお応えします。
株主の皆様の日頃のご支援とご愛顧に感謝するとともに、株主優待制度を通じて当社商品及び当社事業へのご理解を深めていただき、より多くの皆様に中長期的に当社株式を所有いただくことを目的として株主優待制度を新設いたします。
対象となる株主様
毎年6月末日の株主名簿に記載された100株(1単元)以上を保有されている株主様を対象といたします。
株主優待の内容
対象の株主様に対して、一律に株主様限定当社商品(3,000円相当)をお届けいたします。
※2021年6月30日現在の株主名簿に記載または記録された当社株式100株(1単元)以上を保有する株主様が対象となります。
贈呈時期
2021年8月中旬頃に発送を予定しております。
2020年度12月期は、新型コロナウイルス感染症の影響により、先の見えない厳しい状況が続きました。特に懸念したのは外国人研修生の実質的な入国制限による従業員不足で、通常の生産体制を維持するため新商品開発に関わる人員を抑えざるを得ませんでした。
しかしながら、鯖や銀鮭等の焼魚を中心としたチルド惣菜、カップサラダ製品がコロナ禍においても堅調に推移。さらに、原価改善の効果もあり増収増益(売上高:前年比 111.7%、営業利益:前年比 246.7%)を達成いたしました。